[物書きの明け方]
東雲 李葉
水性インクの匂いが好き。
滲んで溶ける模様も好き。
(だって、メ・ルト)
私を動かしているのは、
熱い赤 と 冷たい黒。
如何でもいい事ばかりに、
捕われ拘る私は、
今のままでも充分幸せなのだろう。
紡ぎだせば左手は、
脳の信号を受け止めて、
(走って、イン・パルス)
水性インクが白紙を埋める。
零れ落ちる 連なり。
思いもがけない 私の思考。
幸せなのだと、知らないのです。
自らの言葉に溺れているのです。
これで、いいんだ。
誰かの合図が欲しくても、
(ヴォイス/ノック、ノック、ノック!)
その匂いに惹かれた日から、
ここには私しかいない。