港の囁き 〜 神戸港にて Ⅲ 〜
服部 剛
五年前のあの日のように
神戸港の広場で
石段に腰かけ
体を反らし
旅先の空を仰げば
ふたつの雲は
互いにゆっくり
近づいて
( 異なるものは些細なことで
( あの日は夏の入道雲で
( 今日は冬の真綿雲・・・
やがて顔の形をした雲は
互いの唇を結び
ハート型の雲間に
神戸の青い空が覗いた
振り返った背後に
先ほどまで
愛を囁いていた
ふたりはいつのまに
姿を消していた
港には只
静かに打ち寄せる波だけが
繰り返し響いていた・・・
ふたりは何処か
菜の花畑の広がるような
秘密の国へ
いったのでしょう