絵本のささやき
水島芳野

何もかもに祝福されて生きている、朗らかな笑顔で
これからもずっと、美しい絵を描いて。


答えなど忘れてしまうといい
君を彩るすべてを裏切らないために


どうか




傷つけた痛みのわけを
問いただそうとしない。
君を築いたすべての欠片だというなら
話してくれたって
かまやしないけど。


何もかも騒ぎ立ててすぐさま忘れてしまう
脆弱で愚かな大人にはなりたくないんだ

君のことだけは覚えていたい

だから口を噤んで
目を閉じて
そうすれば君はきっと、
世界のすべてを手に入れることができるよ

たとえばそれは、
美しい宝玉や、
誰かを踏みしだいて得られるものなんかじゃない、
ひどく稚拙な愛の話や
お伽話だったりするんだけど
君ならきっと、
それが永遠だと気付くことができる。


君だからできるよ

だから

どうか

どうか口を噤んで
耳をふさいで
目を閉ざして
そしてそっと触れてご覧
世界はいつだって、優しく君を愛すから。


自由詩 絵本のささやき Copyright 水島芳野 2009-01-02 23:39:21
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