元旦に雪を掘る
オイタル

おとうさん
新年はやっぱり青空だね。
見上げると雪に覆われた町の空は円く晴れ渡り
周縁の雲は黒く山の上に山を重ねて
峰々の隙間から綿アメのような曙光が
白く絡んでいる
首を直角にあお向けた弟
にいちゃん、青空です。
スコップを雪に突き刺して
背を伸ばした兄
おんなじように空を見る
にいちゃん、青空。
ゆうべの雪はまるくやわらかく
重くたれた電線を
背の高い杉の細枝を
ゆっくりと揺らしている。
うわ
にいちゃん。

みんなで突き崩して
側溝の速い流れに落とした雪の塊
これからどこまで流れていくだろう
長く眼差しを伸ばすあの山の向こうの青空で
ミサイルは美しく山なりの弧を描き
その鼻先に赤い花の幻は浮かぶ
正義でも私欲でもなく飛びゆく弾丸の渦
木々は根元から火を噴いて次々とその巨体を倒し
下草から無数の鳥が飛び立つ
危機と欺瞞のあわいをゆれ動くエコの岸辺

にいちゃん
雪だるまを作ろうか。
穴を掘ろうか。
にいちゃん
ぼくたちはどこまで掘ろうか。
つかれるまで。
つかれるまで?
土の中から新しい友達が
ひょっこりと顔を出すまで。
ひょっこりと?
うん
そいつはきっと西の遠い砂漠から
運河を抜けて山を掘りすすみ
一生分のトンネルを掘りぬけてここに来て
見たこともない雪を見て
びっくりするんだ。
そこでおとうとは
目を丸くして笑う。
そうだ びっくりする。
きっとびっくりするんだ。
ね にいちゃん。


自由詩 元旦に雪を掘る Copyright オイタル 2009-01-02 00:35:11
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