クリームソーダ
瀬田行生




クリームソーダを注文すると
ウェイトレスは 少し
嬉しそうな顔した

昔の僕は デパートメントストアの屋上に行く
そこで 必ず クリームソーダ
注文して

その透明な緑の泡の向こうに見える世界を
金網越しの世界を
見ていて

やがて アイスクリームが溶け出して
透明なglassが濁りだす

上から段々と濁っていく景色を
昔の僕は
往生際悪く覗いてたっけ

いつの間にか溶けてしまって
何も見えなくなったglassから目を離すと
いつもの景色
クリームの溶けたメロンソーダをコップ一杯
ストローで飲み干した

駅からの帰り道
少し遠回りをして 小学校の前を通ると
行く道々に知らないビルや知らない店が立ってることに気づかされる
僕が知っていると思っていた町は
いつの間にか知らない街に変わっていて

歩道橋を渡り終えると 一つの見慣れない
自動販売機
その数少ない缶ジュースの中に「クリームソーダ」を見つけた
迷わず ボタンを二度押す

家に帰って透明なコップに注ぎ込むと
それは既に濁ったクリームソーダ

今の自分を見るようでまいった

濁ったglassの向こうには何も見えない





自由詩 クリームソーダ Copyright 瀬田行生 2008-12-31 16:55:24
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