夜の闇の中で人を待つ
オイタル

夜の白い闇の中
そこだけ明るい連翹の枝の下で
心を硬くして人を待った

凍てつく指先を
小さく回して
少しだけなつかしく人を待った

何もない闇の切れ目から
騒がしく雪は躍り出て
いない人の形に
次々降り積もった

ささくれのある言葉は
備えられなかった
あたたかく
両手を広げるような身支度で
待ったつもりだった
わたしに
良いものを届けてくれる
ということだったので

何もない闇のテーブルに
雪は音をたてて降り積もった
利かない指先はゆうわりとまるく
重ねてろうそくの形にそろえて
風の針を耳たぶに並べて
灯は仄見え
そして街では
居並ぶ人々は待たれ
ゆるゆると人は待たれ

待たれた人の輪郭はともかくも
いない人の輪郭はともかくも

風が白く縁取る木立の
傍らに
なんどもなんども
気配は立ち現れながら
その人は
こなかった

待つわたしの輪郭の淵を覗けば
その闇は
両手を広げて
埋もれていった
あやしく 轟々と
雪崩れていった
ますます暖かく
青黒く深く
青黒く深く


自由詩 夜の闇の中で人を待つ Copyright オイタル 2008-12-31 00:10:18
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