惷く
木屋 亞万

恋は夢のようだ
行き場のない電車は
どこから来たのか
窓が濡れている
扉から未確認人間の群れ
黒いリキッドとして流出
その中をさりげなく
歩いてくる恋は
目の前を通り過ぎ
風景と同じように流れる

気がつけば食われていた
どこまで口かわからない
突き当たる扉に身体を預ける
ここが電車という生物の
体内のどの部分であるのか
扉が口と肛門であるなら
車内は消化器官だろう
自分のいるのが
肛門付近でないことを
祈るばかりだ


自由詩 惷く Copyright 木屋 亞万 2008-12-30 22:38:55
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象徴は雨