六甲山頂で叫ぶ
服部 剛
もし、詩を書くんなら今しかない・・・!
って思ってね
旅人の俺は今±0℃の六甲山頂の塔の上で
らがーびーるの空き缶を手に
凍てつく風に吹かれながら
真っ赤な顔を嬲られながら
正面に雲から顔を出した
日輪の輝きに向かって
精一杯に
ふらつきながら
数日前
心の闇の樹海を彷徨った
友の名を叫ぶ
とものぉ〜〜〜・・・!
六甲山頂までの道順を
教えてくれた友の手紙は
財布の中から取り出して
酔っ払った僕の手から放たれ
宙に舞う
凍てつく風は
真っ赤な顔で寂しく震える
この俺を包み込む
旅人をもてなす暖炉のような
友の手紙ほどに
独り旅のこの身にとって
ありがたいものはない・・・
おぉ眼下に霞む神戸の海よ・・・!
山頂の塔で真っ赤な顔して寝転んで
のたうちながら仰ぐ
視界いっぱいの空に
今日も流離う浮雲等の間から
日輪の光の柱は幾筋も
放たれている
らがーびーるの空き缶を
握りつぶして
コートのポケットに突っ込んだ俺は
山頂の塔の上で
只独り
真っ赤な顔を凍てつく風に
嬲られながら
寒さに痛む手で
ペンを握りながら
一心に
只一心に
阿呆のように詩をうたう
全世界を司る
神なる者のような
浮雲に透けるあの日輪に向かって
この両手を、合わせる。