花は、
NARUKO

 
宇宙まで手が届きそうに
よく晴れ上がった日曜
走る車には、
運転席と助手席にふたりだけ
高い青に向かって
咲き乱れる桜を見に行く
ふたりだけの家族
  
  
  
花は、目的ではないんだよ

あなたは言う
花は、実がなるための手段なんだ

そんなあなたの肩の上
うす桃色の花びらは
風にゆれながら
かすかに笑う
  
  
  
それから、また毎日をかさねてる
満開だった花たちは、一枚も残っていない
青青と茂る葉っぱで覆われる桜並木
振り返る人も
仰ぎ見る人もなく
やっぱり、高い青に向かって
枝葉は、揺れながら腕を一杯に広げているのに
  
  
  
花は、目的ではないんだよ

あなたの声がする
花は、実がなるための手段なんだ

そんなあなたの声を聞きながら
わたしは、下腹部に手をあてる
宿せることの出来なかった
蕾をそっと暖める
  
  
  
そのうち、空を目指しながらのばしていた枝葉も
少しずつ冷えてゆく地球の体温に耐えられず
力尽きて、地面へと還ってゆくのだけれど
星空は暖かく抱きしめてくれるから
木枯らしをゆりかごにしながら
そっと眠ってゆくんだ
  
  
  
花は、目的ではないんだ

わたしは相槌を打つ
花は、実がなるための手段なんだね
と、
わたしは、
あなたのてのひらをまさぐって
ぎゅっと、にぎりしめて
あなたの歩幅にあわせて
歩いてゆく
  
  
  
  
また暖かくなって
宇宙まで手が届きそうに晴れ上がったら

見にゆこう
  
  
  


自由詩 花は、 Copyright NARUKO 2008-12-30 13:18:03
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