腐りかけのBanana
板谷みきょう

味も判らない 色の思い出したくない
僕の身体が昔より 元気になったからなのか
枕元にあった 初めて見た黄色いBanana 
正月の喜びと 帰ってきた親父の笑顔

出稼ぎに父さんたち 土産に買った 
店を探していた 故里で待つ家族へ 
飾られた売り口上に 押し寄せる人波 
本当の旨さ 思い出すよ 腐りかけのBanana

いつも聞こえてた 熱で咳も止まらず寝てた 
窓越しに町を見たら 微かに声 聞こえてきた 
Bananaは知っていた ボクが病気と遠足に 
皮剥き食べる喜び 優しい母が手招いた

華やいだ祭りの中 騒がしい人垣に 
指を咥えていた お金ない幼さに 
高すぎる八百屋の前 叩き売られてた 
甘さの見分け方 教えてよ 腐りかけのBanana

台湾産だった 禁止はコレラ流行のせい 
迷子になりそうなスーパー フィリピン産ばかり並んだ

出稼ぎに父さんたち 土産に買った 
店を探していた 故里で待つ家族へ 
飾られた売り口上に 押し寄せる人波 
本当の旨さ教えてよ 腐りかけのBanana

賑わった祭りの縁日 境内の片隅で 
叩き売りさばかれた 的屋のせりふ唄に 
正月は故郷に帰る 出稼ぎの人垣きに 
倅が待ってる土産は 一房のBanana 

近づいた故郷の空 列車の座席で  
親父が抱える幸せ 一房のBanana


自由詩 腐りかけのBanana Copyright 板谷みきょう 2008-12-29 21:31:11
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