ほしくずたち
山中 烏流

 
 
 
 
・あいじん
 
雨の色に濡れる
言わば、瞳にも似たひと
 
歌うように憂うものだから
永久という箱に
追いやられてしまった
 
 隠れる、ようにして
 
 
・かしかり
 
貸し出したのは
黄色い花びらと綿毛、それから
くだらない言葉たち
 
結局、いつまでも
言葉だけは返ってこなかった
 
 最後よりも、長く
 
 
・さくばん
 
覚めてしまう現実に佇む
 
潮が満ち、引くように
睡魔の声を聞いた
 
世界観の端っこで
それは、泣いているのかもしれない
 
 例えばの話、だけれど
 
 
・たましい
 
大切であったものは
中心を、少し外れた先で
爪を立てている
 
手のひらに書いた扉に
逃避を目論見ながら
 
 名前は、何だったろうか
 
 
・なきごと
 
なだらかな頬
人間という人間のことを、私は知らない
 
濡れた指先が
寝癖じみた頭に触れたとき
喉の奥が、そう震えて
 
 春だ、と思う
 
 
・はだいろ
 
初めなど、知りたくはない
 
ひとの柔らかな場所と
触れる、という仕草だけで
平和なのだから
 
本当なら、知りたくはない
 
 迷ってしまうから、
 
 
・まよいご
 
迷子のふりで彷徨う遊び
 
見つからない場所は
紫の空の先で
目を閉じると見つかった
 
戻れないことを、少女は知らない
 
 止めることすら、出来ない
 
 
・やくわり
 
病めるように、膝を抱く
 
居心地を確かめるように
指先は、空を掻く
 
鉛筆を転がしてみたら
夜が生まれてしまった
 
 落書きの言葉と、溜め息で造られた、
 
 
・らっかん
 
落陽に泣くひとがいる
林檎色の空を指しながら、
涙腺を壊している
 
黎明が訪れたとき、そのひとは
老人になるらしい
 
 わたしの目の前を、白髪が過ぎていく
 
 
・わかもの
 
僅かな光を見た
 
色めき立つ様々を背に
頷いたのは、一握りのわたし
 
円卓の中心で踊りながら
をとめの夢に沈む
 
 ん、朝が、来る
 
 
 
 








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自由詩 ほしくずたち Copyright 山中 烏流 2008-12-29 21:17:19
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