冬の航跡
たりぽん(大理 奔)

頬を強く叩くために
雨は雪になったのです
賀露港にたたずむ
漁船のランプを揺らして
海を越えて雪が来ます

  耳をふさぎ目を閉じると
  遮蔽しきれないものが
  肌の上でぴりぴりと生き続けます

言葉を持たない石たちに刻む祈りのようです
海鳴りのように繰り返す
あなたが私に刻んだ言葉のようなのです

立ち尽くす時間のぶんだけ
刻まれた文字もかすれてしまい
路傍で激しく叩く霰があられうるさいので
思わず石碑の口をふさぎます

  逃れられないものを時間というのであれば
  時間もまた、私から逃れることはできません

打ち付ける北風が私を揺らします
雨は雪になったのです
時化だというのに漕ぎ出す船があります
波間に航跡を刻むために進むのです
雪が波に消えるように
わだちも残さない
あなたの道を進むのです




自由詩 冬の航跡 Copyright たりぽん(大理 奔) 2008-12-27 08:29:52
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