そして枯れた花を
ホロウ・シカエルボク







寂れた湖畔の
倒壊したコテージの物陰でぼくは死んでいる
キッチンから
浴室へ続く
通路があったあたり
サギのように伸びて
ぼくは
死んでいる


空を突き刺すような
雄々しいビルの屋上の
貯水タンクの下でぼくは死んでいる
湿っぽい空気の中で
外側から内側まで
見苦しくぶよぶよにふやけて
零れたアイスクリームのように
ぼくは
死んでいる


死はいつもそこにあって
死はいつもそこにあって
ぼくはけして死としては褒められたものではないけれど
死はいつもそこにあって
ぼくはさまざまな選択で静かに死んでいるのだ
長いこと空いたままの
アパートの一室の天井裏などで
無計画に伸ばされて
途中で断念された
標識のひとつもない道の未舗装のどんづまりなどで
けして死としては褒められたものではないけれど
ぼくはさまざまな選択で静かに死んでいるのだ


高速道路の脇の小さな道を
山に向かってずっと走ったところにある電波塔や
スカイラインの側の忘れられた展望台
店主が行方不明になって閉められたままのスーパーマーケットの
通電がストップされた大きな業務用冷蔵庫の中
空っぽになった養鶏場の
一番片隅にある簡易トイレ
新道が通ってから
誰も使うことの無くなった山頂のトンネルの
不思議なほどに山鳩たちが集まる木の幹
ぼくは死んでいる
ぼくは死んでいる
ぼくは死んでいる
ぼくは死んでいる


せーのでやっちまってくれ
ためらいが生じたりしたら
見るも無残な結果になりそうだ
せーのでやってくれ
思いきりやってくれ
すべてのものが
ぼくの







墓標になる











自由詩 そして枯れた花を Copyright ホロウ・シカエルボク 2008-12-26 23:04:41
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