冬恋
高杉芹香
風が強くて
きみがくれたシュシュと共にあたしの長い髪を揺らした。
新宿のイルミネーションは
前を歩くふたりを包んでいた。
つい今まで
別れ話をしていたのが嘘のように
ふたりはふざけて笑っていた。
振り返って
あたしの名前を呼ぶ彼は
あたしとの関係を彼女に話さないままだった。
きみはずるい。
あいつ。チーズケーキ、食えないんだ。おれ、好きなのに。
だから、お前は、おれとこれからチーズケーキ食う仲ね。
なに、それ。
そんな1ヶ月前の出来事。
抱きしめられたら何も言えなくなった。
ずるい、あたしは。
車で送ってもらうんじゃなかった。
車を降りるとき
出来るだけ出来るだけ
何もないことのように
チーズケーキご馳走様でした
って言ったのに。
あんな顔されたくらいくらいで
きみのキスを受け入れてしまうなんて。
チーズケーキは冬のずるさの味がする。
ずるい恋。
冬のずるい恋。