つくろうひと
恋月 ぴの
私がまだサンタクロースを信じていた頃
父方の祖母と同居していて
私たち兄弟の面倒をみてくれていた
今にして思えば幼さ故とは言え
彼女には随分と理不尽ことしでかしたものだと悔いる
それなりの家から嫁ぎ
それなりの人生を送ってきたはずの老女がひとり
我が儘な孫ふたりの面倒を押し付けられ
団地サイズの平板な日々
小さな背中で生き長らえることに耐えていた
毎年クリスマスシーズンになると
美容院を営んでいた母の帰りは普段に増して遅くなり
私は祖母と弟の三人で母の帰りを待った
その頃は団欒の証しコタツがあって
もぐもぐと入れ歯を舐め続ける祖母の横顔に
訳も無く苛ついてみたりした
私がまだサンタクロースを信じていた頃
枕元には靴下を並べ
兄弟ふたり早々に床へつけば
二つ違いの弟が手を繋いで欲しいと甘えてきた
つれなく跳ね除けてはみたものの
悲しそうな横顔に負けて右手を差し出す
あの時の弟が私に求めてきたもの
それは不在がちな母の身代わりだったのか
それとも夢見ごこちへと誘う水先案内だったのか
今となっては面と向って問い質す訳にもいかず
枕元に並べた靴下の顛末など尋ねて話しを逸らした