進歩
伊月りさ

きみは
無重力マクロの落雷にうたれた
最前線フロンティアに魅せられて
とんでゆく
その脳内に
霊長類わたしは窒息する

アローン、
アローン、



わたしはきみのこどもを産みたいのであって
人類に加担する遺伝子を遺したいわけではない
無痛分娩が許せないのなら
きみがこの肉を裂きなさい
この絶叫と
人口六十六億に垂らされる一滴の激痛を
見つめながら
血まみれの生命を引きずり出せばいい

アローン、
アローン、



わたしたちは
会わなくても
キスをできる
セックスをできる
あたたかいだけの
アローン、
アローン、

未来がやってくる

きみは大興奮なので
涙が
止まらなかった
涙の
成分を知ったところで



秒単位で変遷する渦に浮いているらしいが
今日の夕飯を考えながら
隣町のスーパーマーケットまで
歩いていく
いつもとおんなじ、
わたし、

アローン、
アローン、


自由詩 進歩 Copyright 伊月りさ 2008-12-24 16:00:43
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