進歩
伊月りさ
きみは
無重力の落雷にうたれた
最前線に魅せられて
とんでゆく
その脳内に
霊長類は窒息する
アローン、
アローン、
わたしはきみのこどもを産みたいのであって
人類に加担する遺伝子を遺したいわけではない
無痛分娩が許せないのなら
きみがこの肉を裂きなさい
この絶叫と
人口六十六億に垂らされる一滴の激痛を
見つめながら
血まみれの生命を引きずり出せばいい
アローン、
アローン、
わたしたちは
会わなくても
キスをできる
セックスをできる
あたたかいだけの
アローン、
アローン、
な
未来がやってくる
と
きみは大興奮なので
涙が
止まらなかった
涙の
成分を知ったところで
秒単位で変遷する渦に浮いているらしいが
今日の夕飯を考えながら
隣町のスーパーマーケットまで
歩いていく
いつもとおんなじ、
わたし、
アローン、
アローン、