2008/12/23
鎖骨
あなたの頭はいつだって
テレビに、あるいは紙束に
あるいは口をつぐんだきりの封筒へ向けられていた
あなたは僕が
あるいは僕らが
とても嫌いで、忌避していた
冬の
割れるような険しさの蛇口からとどく水に遣るように
僕に目を向け
手を伸べた、いつも
そのようにして首は向けずに
その視界の傍らに
横たえられていた死馬だった
やわらかな蓆のひとつも
本心では与えたくなかったんでしょう
棄てたいのに、頭の中では数え切れないほど棄てていたのに
いつも意識の隅に巣食っている
あなたの望む生き方を閉じさせる死臭だったろうから
いいのです
あなたの感覚は全くもって正しいのです
憎かったり疎ましかったり
そういうこともあるものです
そういうことの方がおおいものです
僕らは強く隔てられていて
険しい野路を各々あるく
獣であったのだから
屋根と金と糖蜜のような甘さの共同幻想が
一時は原罪の苦みを取り去ってくれていたけれど
今冬からはもう浸っていられない
死んだように生きていてはいけないのだから