キリギリ

物心ついてから30年弱思ってきたので
そろそろ思わなくてもいいかな、と思い
最近は思わないようにしようと思っている

思い返せば私の思いはどうにも厄介で
健全な成長を阻害していたように思う
たぶんそれは劣悪な外見をストレートに反映した
やむにやまれぬオタクっぽさだったように思えるが
外面に即した内面を作ろうと陵辱系のエロゲを買って
げんなりしたことがつい最近のように思える

そして外面を反映した内面で思う私はやはり内向的で
つまり内向的なのでベストオブ内向的な行動の選択と
ご期待通りのネット弁慶ぶりがどうにも心地よく私を
より内に内にと籠らせてきた
ゴモラも真っ青の籠りっぷりだったと思う

若かりし私は他に見るものもなく己の深淵を覗いた
覗かれていたようにも思えるどちらにせよ俗悪な根性は共通だった
私は私を突き上げる
それも労働組合のように力強くではなく目を伏せ何と言うか
あぁもう迷惑だなぁ、と言うような素振りでぐにぐに突き上げるのだ
そして私はじわじわと足場を失う
そしてでろん、とだらしなく落ちる
仕方なかったのだ、と笑う
なに1つ変わってはいない

或は私は私の中にもう1人の私を見つけなかった
うーんと潜っても私の意識は1つだった
そこで見た景色は例えるならば通行量の多い道路に面した空き地である
草が生え空き缶、マネキン、捨て看、軍手、ストッキングなどが
どれも汚れ湿りながら散乱している
それは如何にも哀れだ、と思い私はどこかで聴いた言葉を差し込んだ

空き地の中心部に穴が空きゆっくりと広がる
雑多なゴミが脇へと追いやられ輪郭を失いただの色になる
やがて広がりは止みゴミはマーブル調の輪になり空洞を囲む
なんてカラフルなトッピング
此処にきて私はドーナツ職人であることを宣言する

或は何を言っているんだまだそこに階段があるじゃないか
がんばれがんばれもっと行ける君なら行けるきっと行ける
そう言われたような、またはどこかでそんな言葉を聞いたような気がして
私は垂れるように階段をくだる

今もまだくだっている

しかしどうにもくだらないしくだらないしそろそろ誰かに怒られそうな気がするので
もうくだらないことにしてくだらないことを思わないようにしようと思っている。


自由詩 Copyright キリギリ 2008-12-22 17:46:36
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