詩のマーケティング論 番外編 −詩の即売会−
いとう

番外編です。本編はこちらにてどうぞ。
http://poenique.jp/sinaps/ito/ito0200.htm

詩の即売会にはまだ10回程度しか行ったことがない。ポエケット、詩マーケット、POEMばざ〜る、このあたり。と、その未熟な経験の中で考えたことを。で、まず論を二つに分けます。ひとつは、即売会のターゲットについて。もうひとつは有効な出展物について。


1.ターゲット

詩の即売会は何のためにあるのか。これは主催者の意図によって異なりますが、大きく分けて2つの方向性に分かれています。まずは、詩人間の交流のため。ターゲットは詩人です。もうひとつは、詩をもっと社会に広めるため。ターゲットは詩人以外です。

前述の3つのイベントの中では、POEMばざ〜るが前者をターゲットとしています。以前主催者の一人、平居さんとお話したときに、彼はそのように断言していました。実際、即売会を使って何をするかを考えたとき、ターゲットを詩人に限定するのは安全で確実な方法です。

それとは逆に、詩人以外をターゲットとする場合、かなりの創意工夫が必要となります。会場設定やら進行やら告知内容やら告知方法やら。要はプロモーションとパブリッシングです。で、俺は主催したことないからよくわからんので(笑)、個人的に特に気になる“会場”について。

詩マーケットは基本的に屋外、公園で開催してました。目的を持って集う人以外の人たちが、ふらっと入れるように。また、最後の回は大学の学園祭に混じって開催して、これはかなりヒットしたようです。詩に関心を持つ層以外で、かつ学生という層。このターゲットへの訴求が見事に当たった模様。

ポエケットは第1回からずっと、江戸東京博物館内で行っています。ポエケットの最終的なターゲットは、詩人以外を想定しているらしいので、じつは、こういった会場で行うのはデメリットなんですね。特定の屋内の会場で開催すると、目的性を持った人がメインの客になってしまうので(要はふらっと入りづらいのですよ)。今回、第8回についての多くの人のレポートの中に、ブース数が多くなって手狭だから場所の変更を、という意見がいくつかありましたが、その前段階として、最初から、最終ターゲットと会場がマッチしてないんですね。第4回か5回のときかな? 主催者の一人であるヤリタさんにこのデメリットについて話したのですが、ヤリタさん自身は、それをわかったうえで、この場所ですることにこだわりを持ってました。現在どう思ってるのかは知らん(笑)。もしかしたら会場を変えるかもしれないし、ターゲットを変えるかもしれない。いずれにせよ、(もちろんその目的における変更の必要はあると思いますが)ブース数の関係で別のもっと広い会場に変更したとしても、ターゲットと会場の根本的違和は解決できません。

で、おそらく、詩人以外をターゲットとする場合、出展者に対するコンセプトアナウンス、あるいは教育が必要になると思う。出展者自身は自分たちの詩集や詩誌を売るために来ているので、結局のところ、売れれば誰が買おうといいのですよ。なので、ターゲット訴求を突き詰めるなら、それぞれのブース(出展者)のコンセプトの統一、あるいはターゲットへのコンセンサスを得る必要があると思います。逆に言えば、詩人以外をターゲットとする場合、そこまで徹底する必要がある、ということです。


2.有効な出展物

出展物について客としての経験則からまず言えるのは、「高いものは売れない」ということです。これに尽きます。上限500円。これが限界。高価な詩集などを売るのに即売会は向いていません。まったく売れないことはないけれど。

で、次に、詩集、詩誌の装丁。これは凝らなければいけないことはないようです。凝ってはいけないわけではなく、凝ったほうがいいわけでもなく。(もちろん装丁も含めて「詩集」であるという意見には同意します。それを踏まえたうえでの話として、あるいは、別の見地から装丁について考えた場合の話)。要は、詩集や詩誌を購入するという動機の根本の欲求は、それらの購入ではなく、購入したものの中に存在する「作品」なので。ただし、ターゲットによっては装丁が購入動機の重要な要素になる場合もあります。このへんはイベントコンセプトやら来場者層、あるいは自身の詩集、詩誌そのもののターゲットを事前にリサーチする必要があるでしょう。装丁の重要度はそれで決まります。

もうひとつ重要なのが、並べ方。展示方法。多くのものを価値的に並列に並べると、結局どれも際立つことなく死んでしまいます。陳列にはメリハリが必要。まずメインの展示物で目を引かせて、他のものも見てもらう。オーソドックスですが、効果的な手法です。

で、これも手法に絡むのだけれど、購入するとお菓子などの簡単なおみやげがもらえる、みたいなことをしているブースがいくつかあります。購入意欲発現のための付加価値として行っていると思われますが、これ、あまり効果ありません。購入意欲を発現・増加させるためなら、たとえばクーポン券とか、そういった手法のほうが効果的。というより根本的に、付加価値を付けるなら購入への付加価値としてではなく、ブースに人を引き止めるために使うほうが効果的です。そう考えると、おみやげ的なものはあまり意味がありません。また、ブースに引き止めるための付加価値としては、、、、と書こうと思ったのだけれど、さすがにそのへんは自分たちで考えてください(笑)。

んと、要は、付加価値を付けるポイントとして、<1.客を引き付ける><2.客を引き止める><3.客の購入欲求を高める(=買わせる)>の3つがあって、マーケティング的にはこの中で最も重要なのが、一見1や3のように見えてじつは2である。ということです。これまで見てきた即売会の中で、この2に重点をおいて付加価値を付けているブースは、ほとんどありませんでした。ま、そんな感じで番外編終わり。



散文(批評随筆小説等) 詩のマーケティング論 番外編 −詩の即売会− Copyright いとう 2004-08-11 00:15:58
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