きょうの天国
あすくれかおす
「昼休み」
昼間は雲間に光がさした
カッターナイフの芯のかたちで
だんだん空が開けてくると
都庁周辺の緑地では
予報士たちが嬉しそうに
フユバレ!テンキ!と羽ばたいている
「退社」
タイムカードを押して
必要なぶんの暗がりを身にまとうと
いつものひとりの帰路になる
これが人手不足の
照明係のいないわが劇団で
次の公演は
あなたも一緒にどうかしら
あ
下心じゃないのよ
これはおばさんの熱意なの
こっそりひとり/芝居して
キャロットタワーの足元をゆく
右手に持ったピルクルの
冬の肌色がやたらに寒い
(どっかに落ちて/いないかな/な/ご/み)
「自宅」
なんもない箱だったらな
まだらに絡んだままの洗濯物も
ハードカバーが文庫本の上で
アンバランスにいちゃつくこともなくって
「すべては家主の御心のままに」
忠実な僕のレイアウトは言うけど
快適なレベルなんて
そんなのいまではいらなくて
セーブのできないファミコンみたいに
いつ帰ってきても空き家に戻っていて
ここがいつでも
なんもない箱だったらな
(つづ/りつづ/けること/つづること/しょもうされる/うみと/うみ)
「きょうの天国」
わたアメも猫たちも
ぼくが来る前からフワフワだった
ウニとかクリとかはじゃっかん丸くなっていた
ダービー馬には羽が生えかけており
ぼくは白いワンピースだった
恥じらいながらも
こういうのちょっと着てみたかったというと
地獄のふたがカタカタなりだしたので
あわてて火を止め元栓をしめた
大天使様が
ぽちゃぽちゃのお腹をゆさぶりながら
ご飯ができたよとみんなに言った