空以外の空
小川 葉

 
その人のことを
空さんと呼んでいた
空さんは
だだっ広くどこまでも
青くなったり赤くなったり
涙したりして
人のようだった

空さん

時々丘の上から
呼びかけてみるけれど
空さんは
自分に名前があるなんて
知らないのだから
何もこたえない

命にはなぜかたちがあるのだろう
かたちを変えて流れてゆく
空が空以外になるように
佐藤さんがいなくても
それ以外に佐藤さんがいるように

いつも見てくれる
ぼくのことを
一人ぼっちじゃないから
人は空を
空さんと呼びたくなる時がある
 


自由詩 空以外の空 Copyright 小川 葉 2008-12-19 04:02:05
notebook Home