空以外の空
あおば

               081218

古道具店に立ち寄ってみたら
昭和初期のラジオがあって
古民具のような顔をして
お雛様を見つめてた

並四ラジオを探す
メーカーものは
マニアが探す
ただの愛好者の私は
電気屋さんがパーツを集め
安く組み立て無銘のラジオ
実用価値の無くなった今では
真空管も抜き取られ
残骸になって
引き取り手もなくなって
無惨にも朽ち果てようとしている
そんなラジオが最後に見る夜景
それは祭りの晩の裸電球のような
年末の通りに輝く白色のLED
タングステンの電球が追放され
LEDの天下になるのが分かっているのか
落ち着いた顔でギラギラと輝いて
真空管を抜き取られ
鳴ることもなくなった
古い無銘のラジオの
ダイヤルを照らしてる
内側の文字は読めないが
放送周波数が記してあるのは
分かっている
分かっていても
読めないのは
なんだか不便だ
使えないラジオでも
ダイヤルの数字が読めないのは
なんだか不便だ

不憫なヤツだと
笑ってくれるな
そこにいる底抜けに明るい
だれかのおっかさん

空色の空が
目を逸らして
笑っている



自由詩 空以外の空 Copyright あおば 2008-12-18 22:36:28
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