永遠パーマ
m-rod
淡白な言葉じゃつまらないから
頭から口までを迷路にした
たぶん楽しんでくれるだろう
きっと飽きられはしないだろう
事実 幾人かは認めてくれた
他の人とは違う、と言って
服を脱ぎ 鍵穴を見せてくれた
でも決まって長続きせず
むしろ挿し込んだ瞬間に飽きていた
そんなことを繰り返し
しばらく経って、机の上に
いまや使いようのない鍵を並べたて
「正」と言う字を幾つか作った
だけど あらためて眺めるそれは
どうしても正しく見えなくて
みんな一様 淡白どころか
薄情なほどのみすぼらしさで
頭の中に からからと鳴るばかり
たどり着くまで
いたずらに複雑化させた思考回路は
誰かの正直な言葉さえ
ぐにゃぐにゃに曲げて届けたらしい
急に不安になって、幾人かに
「鍵は要りませんか」と聞いて回る
間に合ってます、とか
もう間に合いません、とか
答えはやっぱり複雑だった
だから唯一
鍵穴を見せてくれなかった人を訪ね
「鍵は要りませんか」と聞いてみる
彼女は手を差しのべて
指先で鍵をはじいた
残酷な事をするもんだ
そう思い、顔を上げると
意外にも満面の笑顔があった
「鍵はなくてもいいですよ」
そうして、僕は鍵を失くした
彼女は、僕の大嫌いな
「永遠」という言葉を使う人
適当なことを言いやがって
この期に及んで
ぶつぶつと愚痴を言う
ちらっと見る その背中には
ぐにゃぐにゃだけど素直なパーマ
それは昔、出会ったころには
気づけなかったものだった
迷路みたいだけど
何も隠すことなく
道はたくさんあるけど
全部にちゃんと終わりがあって
知らぬ間に大人になったのに
まだ、子供みたいなにおいがした
おそるおそる告げる
「永遠なんて、分からないんだ」
そこは四角い白い部屋
鏡の中に移る鏡
テレビの中でさわぐテレビ
終わり無く続くものが
怖くて仕方ないから
迷うことで 迷ってることさえ
忘れようとしてたこと
結論は無いけど打ち明けて
無いはずの理由を求めた
顔を上げると 机の上に鍵
「何に見える?」と彼女が聞く
「鍵」と僕は答える
顔を上げると
そこにはやっぱり、満面の笑み
「これが一に見えるなら
それはそれで正しいよ
もしも永遠が怖いなら
迷うことも、怖いことも
ずっと延々でいいんじゃない?」
ひとつなら、次のドアは開かないから