Kくん
さとう 星子
彼は今、
平和に暮らしているだろうか
彼の友達が真夜中に私の家に来た
「亡くなったから、彼に線香をあげに来てほしい」
私は戸惑った
彼の友達は言った
「君が初恋の人だったから」
私が覚えているのは
彼と同じ席になった時
なぜか周りにひやかされたこと
同じ部活に入っていたことを
卒業アルバムで知ったこと
彼の作文にこう書いてあった
「僕は将来 宇宙に行きたい」
彼はとても勉強ができて
算数の時間に
一、十、百、千、万、・・・・・・・と
果てしない数を頭で巡らせながら答えた
あの時の彼の目の奥が放った
未来を見据えたような煌めき
女の子から声をかけられると
少し戸惑ったような純朴な仕草
もう
この世界には
彼は
私の記憶にしかいない
命 命 命
「生きるということは
死なないということ」
そんな極論が
私の頭の中でまわってまわって
肉まんを温められるくらい熱くなる
Kくん
君は今
平和に暮らしているだろうか
そして
宇宙のことを思い
月に旅立つ夢を見ているのだろうか