正気
砂木

教科書に書かれた詩に
しぶきを浴びせられたような気がして
気持ちがよいなあと感じた
あれは 小学三年生の頃
理屈なんかない
パシャっと水しぶきがかかったようで
ひとりで なんだか笑ってた

宿題でもないのに 詩のノートなんか作って
誰も読まないのに 言葉をさがしてつづっていた
ああそうだ これを夏休みの自由研究としてだせば
一石二丁と気づいた 小学五年の頃
ああ ただ楽しくて楽しくて得意になって
楽しめる事が嬉しくて楽しくて

やがて詩人になりたいと思った小学六年生
詩人になれないと悟った中一
詩人になれなくても詩は書くと決めた中三
生活費を稼げるようになったらお金を貯めて
詩集を作ろうと頑張った そして作った
十代 二十代
結婚してもやめなかった 諦めなかったけど
三十代になって やめたつもりだった
一作も書けなくなって
ただ なつかしいと 詩の世界からの便りを
ただなつかしいと 思うだけだったのに
結局 詩にしか言えないことがある私
詩人になりたいと詩人になりたくないは
いつも五分と五分で
絶対に詩の世界には支配されないと思いつつ
またしても ひざまづいてしまう私
三十年以上たっても求めてしまう
私一人のものでもないくせに
詩とはほんとに いいきなものだ
のんきで

すっかりと落ち込んで動けない朝
正気で私は思う

こい 詩魂

右手の中に詩魂があふれるいめーじがひろがる
やがて私の身体に 詩魂が湧き上がって
ふつふつと よし 稼ごうという気力があふれるのだ

いたって正気だが
詩人に変身は 勿論しない




自由詩 正気 Copyright 砂木 2008-12-14 11:06:24
notebook Home 戻る