めおとのきせつ
aidanico

「さむいのなんのって、」
「あんた、八月だよ、ゆめでもみてるのかい」
「ばかにするない。おいらあ狸にだってばかされたこたあないや」
「そりゃあむこうはなのんないさ」


…っじいじいじい
…っじじいじじじ
せみのなくのもかなわんに、
…っじじいじじじ
…っつじいじじじ
はすからひさえてりつける。

「おおい、おまえ、鍬をもっていったかい」
「いいや、傘はもったけど」
「おまいさん、このひでりでしょうきかい」
「てんきあめだよ」


びいりり、ばりいり
てんをさく
ぶるりりばりりり
おおいびき
ぼおりり、ばりいり
しらぬのは
いびきかくやつ
そのひとり。

ないこえ、ないごえ、
ごろごろと
ねいこえ、ねいごえ
そこらから
にいこえ、にいごえ
なきじゃくる
あらしのくもは
なきふらし。

もそりもそもそ
おそあしで
そこのけそこのけ
おれがゆく
でんきかあめかはしらないが
おれがゆくのは
ふらすため。

「そんなにすめしばっかりたいてどうすんだい」
「そりゃおまえ、たくさん御まんまこさえてしこたまもってかえるのさ」
「もってかえるったって、ここがおまえのうちじゃあないか」
「あたしのうちは伏見のほうさ」


 きつねはよめにまいるため
 くもへのぼっていこうにも
 炊いたすめしがおおすぎて
 こぼれてゆきになったとさ

「ちくしょう、おいていっちまいやがった。おおい、さっきはひでりでこんどはゆきかい、まったく、おれがさむいのかあついのか、なつなんだかはるなんだか、てんでわかりゃしない」


しゃくしじょうぎもかなわんが、
ふゆはほうきがまたこまる。
しれたにょうぼがいないのは、
ほうきがないよりまたこまる。

はれたまぶたをこすりつつ
みくだりはんだけかきました
てんでまじめなやからです
てんにばかされたというのにね。



自由詩 めおとのきせつ Copyright aidanico 2008-12-11 23:14:14
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