おとうさんの空
佐野権太
乾いた空を見あげて泣いていると
(おとうさん
(あんまりやさしい気持ちになると
(涙がでたくなるんだよ
という
疲れたときは
ふうせんかずらの種をあげる
それから
ビールを買ってあげる、と
オモチャみたいな財布を掻き回す
君がゆれている
寝転んで見あげる
小さな草の
花のように
その向うには
必ず澄んだ空がある
なあ
もしかしたら
君は空を飛べるんじゃないか
といえば
水たまりを飛びこえて
(おとうさんも
(ほんとは飛べるんだよ
という
吹きだまりがさくさくと
心地よい音に踏まれてゆく
その、自由なつまさきの
奏でるほうへ