十四冊目
小川 葉
本が十四冊ある
一冊目はこんなに厚いのに
十四冊目はこんなにも薄い
空白のページがたくさんある
行間を読む
なんて言うけれど
読むことさえ困難な
その空白に
息子が落書きをはじめる
空白という空白が
息子の意味不明な絵や文字で
埋めつくされる
すると言葉が生まれた
笑いながら
じつにひさしぶりに話したものだね
僕らはほんとうに
そうだった
妻と恋人だったときから
交わした言葉を本にしてきたけれど
十四冊目は
去年よりも少しだけ厚くなった
あの頃みたいに
もうすぐまた年が暮れる