雨をひらく
石瀬琳々

雨をひらいて いくつもの声のその中へ
飛び込んでいければいいと思った
軒下からしたたる雫が はねて、
とりとめない心に降りかかる
泣いているの、とたずねる人の
声がしたような気がして
振り向くとまた雨、雨、の雫
心のひだに落ちて 落ちて濡れてゆく


ドアをひらいて 誰もいないのに
いつも確かめる癖がつく
手を差しのべると雨の訪れは
途切れる事のない声の連鎖
いつか言葉をかわした人の
やさしさに触れたような気がして


雨をひらいて その向こうに広がるものに
飛び込んでいこうと今素直に思う
目を閉じて流れる雫が 落ちて、
濡れた心に波紋を作る
大丈夫だよ、と抱きしめる人が
そこにいるような気がして
瞳を上げると雪、雪、の乱舞
触れて消えてゆく その白さに満ちる



自由詩 雨をひらく Copyright 石瀬琳々 2008-12-10 13:36:36
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