田舎の冬
高橋魚
田舎の冬の晴れた日
窓の向こうから
胎児の声が
導管を流れる水の音が
聞こえてくる
優しい陽に植物は色付く
役所勤めの男があくび、をしている
ひどく美しい
ひどく静かだ
緊張感すら、漂うほどに
寒風が北から南へと貫き
猫がくしゃみをする、と
遠く、遠くの方で
怪物の母の
陣痛が始まるのだ
誰も気付きやしないうちに
自由詩
田舎の冬
Copyright
高橋魚
2008-12-09 02:18:22