【短歌祭参加作品】らせんの向うの昨日
はな
剃髪に立ち会った日の陽の光 淡く結んだらせんのつづき
葉脈にミシンをかける神様は季節のすきまは縫い合わせない
にんにくで追い払うんだ君のこと季節外れの桜の匂い
「間違いじゃないからそっとあけてごらん」扉の向うは砂浜でした
釦の穴から見えた教室に針をとおして玉結びする
砂糖足し何度も何度もかきまぜる夏の魔法がとけてゆく夜
舌と舌やわらかい午後重なった二頭の牛の挨拶のよう
とうめいな指令を乗せて風は吹く戻らない日のりんかくを消し
ながれてるあたたかいのは鼻血だろう涙にしてはしょっぱくないから
東京の冬にうかんだはくちょう座飛び立つ準備はゆっくりでいい