He
1486 106

生まれた時から彼を知っている
普段はなかなか思い出さないけど
いつも僕のすぐ近くにいる

喫茶店の窓際の席
最終電車の車窓
町中のショーウインドウ
いろいろな場所で彼に出くわす

この前トイレで顔を合わせた時は
ひどく疲れた表情でこっちを見ていた

「おい、浮かない顔してどうしたんだ?」
彼に尋ねても答えてはくれない
いつも僕の動作を真似するだけ

彼はとても面倒見がよくて
学校でも職場でも人の気を惹いた
いつだって彼の周りは笑顔で溢れていた
だけど彼だけはすごく辛そうだった

人知れず抱えていた不満も
密かに泣いていたことも
本当は全部知っているんだよ
誰よりも彼のことを知っているんだよ

だけど時々 彼のことが分からなくなる
彼が他人のように思えてくる

本当の彼に会いたいと思った
目の前にいる彼ときちんと向き合えば
やっと一つになれると思うんだ


自由詩 He Copyright 1486 106 2008-12-07 23:13:35
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