黒々としたものが
オイタル
黒々としたものが夜じゅうぼくを焼く
それは祈りであるのか いや
白いもの 白くて細かく膨大なものを台座に見立てる
それを崩す
台座に見立てたものの上に数冊の本を置く
それを崩す
台座に見立てたものの上に数冊の本を置き黄色のロウバイを立てる
それを崩す
台座に見立てたものの上に数冊の本を置き黄色のロウバイを立てて風をさえぎる
それを崩す
台座に見立てたものの上に数冊の本を置き黄色のロウバイを立てて風をさえぎったらお前を呼んで庭に懐かしい春の朝食を並べる
それを崩す
台座に見立てたものの上に数冊の
これも祈りであるのか いや
この言葉は祈りであるのか いや
白い台座と本と花瓶は祈りであるのか いや
ではロウバイと風とお前と懐かしい朝食は いや
編み針を持って小指を掛け、親指と中指で編地と一緒につまむ。小指は曲げて。手のひらで押さえるように。それを崩す。
最初に左針の編目と編目の真ん中に針を置く。それを崩す。いや
右針を下げながら右に崩し、通そうとする目を右針の腹で少し崩す。それを崩す。いや
それを崩す いや
これこそは祈りであるのか いや
編むことは祈りであるのか いや
針の腹は祈りではないのか いや
遠のくお前の時計の音は いや
では聞きたい
祈りはどこにあるのか
それは黒々と焼くものの中に
それはぼくらの五十の鐘の中に
それはその針の腹の上の春に
それは祈ることの中に
今朝
冬の鳥が窓をすり抜けてすばやく
家中に億万の雪を降らせた
お前もぼくも
もうそれを崩してはいけない