冷たい鳥
智鶴

始まることのない夜と
故に来ることのない朝が
裏側の世界で目覚める頃
静かな雨に、私は鳥のように濡れて
争わないということは、何も得ないことだと
誰かが唱えていた

それなら、私は全裸で凍えていよう

失うことが酷く哀しいから
始めから狂ったふりをして
ただ白痴のように
美しいものはいつも儚く
銀色に魅せられたように溶けてしまう

乾いた腕で
誰も知らない夜を崩して
遠すぎる迷路の中に
太陽を落としてきた
もう何万回も生まれ直して来たかのように
何千回もの死に疲れてしまったかのように
ゆっくり私は腐っていく

美しい筈の
今はもう塵のような星が
宙を舞うには少し重すぎるようで
ただ、堕ちるだけ

冷たい雨に打たれて
もう飛べなくなった鳥が
月を恋い焦がれるように
仰向けになって


自由詩 冷たい鳥 Copyright 智鶴 2008-12-06 03:43:12
notebook Home