球体
aidanico
星も出ない夜、
寒さに静まり返り
冷たさだけが
消えた街灯の下に
佇んでいる
よる、
眠りに付こうとする
皺だらけの手が
手を伸ばすと
両の肢がでる
大地は俟っている
お前よ、
何を泣く
寝床の温ささえ
知らないのに
*
目を開いて睫を
両側から見詰めている
群青の、
眸が
割
れ
る
両生類
その類の
鰭のあるぬらぬらとした
体を撓らせて、落ちた、淡い桃色の
滴るような肉を
喰らう
音が
聞えて
居るのに
未だ動かない
*
季節外れの蝉が鳴いている
褐色の皮膚は脆く
ぱらあ、ぱっぱらり、
と
落ち葉に溶け込むのを
内側から
視界の開けてゆくのを見る
*
鴎、
広々と翼を広げ
潮の香りのする海を
飛び交う
警笛が
聞える、遠くから
旋廻せよと
言うでもなく
戻ってこいよと
言うでもなく
腹の白と雲の境界線を
知らないのに
*
深緑の苔の覆う沼から
両足を這い出し
近づくのだか
接吻するように
首に回る
黄色いびいだまの視線は
転がる
前に
ゆっくりと
*
お前よ、
何を泣く
象の眼が老人のように優しいのを知っているか
猿の尻が恥しさに赤いのを知っているか
鳥が嬉しそうに騒ぐのを知っているか
蛙が声を合せて歌うのを知っているか
お前よ、
何を泣く
この地平を
仰いでも、
仰ぎきれないのに