湿り
百瀬朝子
渇いた世界にドライな人々
友情や恋心にさめた暁
他人に無関心を決めこんで
そのくせかまって欲しくて
涙で誘っても
あとに残るは後悔と自己嫌悪
頬をつたう一筋の涙
うつむいてこぼれた涙が数滴
大地に落ちて染みをつくった
渇いた世界が少しだけ
潤うことを願ったんだ
あたしの心に涙を落として
あなたの生ぬるい涙で
湿った心を取り戻したくて
あなたの頬を打つ
思い切りよくピシャリと一発
このてのひらに痛みが残っても
それは愛の証だと
胸を張って叫ぼう
歪んでいく世界があたしを包もうと
耳鳴り 遠のく意識のわずかなあいだ
呼吸も忘れて願うのは
消えたあたしにひとりでも多くが涙して
世界を湿らせてくれたらいい
そんな世界にあたしは
再び生まれたい