湿り
百瀬朝子

渇いた世界にドライな人々
友情や恋心にさめた暁
他人に無関心を決めこんで
そのくせかまって欲しくて
涙で誘っても
あとに残るは後悔と自己嫌悪

頬をつたう一筋の涙
うつむいてこぼれた涙が数滴
大地に落ちて染みをつくった
渇いた世界が少しだけ
潤うことを願ったんだ

あたしの心に涙を落として
あなたの生ぬるい涙で
湿った心を取り戻したくて
あなたの頬を打つ
思い切りよくピシャリと一発
このてのひらに痛みが残っても
それは愛の証だと
胸を張って叫ぼう

歪んでいく世界があたしを包もうと
耳鳴り 遠のく意識のわずかなあいだ
呼吸も忘れて願うのは
消えたあたしにひとりでも多くが涙して
世界を湿らせてくれたらいい
そんな世界にあたしは
再び生まれたい


自由詩 湿り Copyright 百瀬朝子 2008-12-03 17:16:56
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