鉄獣軌
木立 悟



白い杭と鉄条網が
鉄の獣を取り囲んでいる
天気雨がなまぬるく
獣の背の光を流す
欠けた虹がすべるように
ひとつふたつと遠去かる



溶けるように昇る空
指の跡のついた土
水と光の交わりの蜘蛛
したたる血さえ怖気づく
獣の目のなかの羊の黄金
今にも飛びかからんとする意志の光が
色となり線となり渦まいている



ごうごうと夕焼けが鳴り
つまさき立ちの光が歌う
(とどく深緑)
(とどかぬよ)
咲く花はみな深緑
重なりつづく深緑
(光吸うよな深緑)



杭埋める草木を
棘からむ棘を濡らす雨
足跡にかがやく金の錆
欠けた虹は蝶のように
羽の生えた鈴のように
囲みを砕いた鉄の背を
荒れ野を過ぎる鉄の背を追う








自由詩 鉄獣軌 Copyright 木立 悟 2004-08-08 21:12:35
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