花
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道端にひっそりと咲いていた
花の名前を知ることはなかった
知らない間に消えてしまった
空っぽの風がそこに吹いていた
期待されて生まれた命と
期待されずに生まれた命
蒔かれた種のうちどれだけが
日の目を浴びることを許されるのだろう
人は優しさで育つ花のようだ
放っておけば萎れてしまう
すべての涙を使い果たして
道端に咲いた新しい花も
いつの間にか忘れてしまった
存在しているのに気付かれない
だから生きることも死ぬこともない
愛されながら育った命と
愛を知らずに育った命
咲かずに落ちた蕾に降り注ぐ
雨はいつだって何も語らない
人は優しさで育つ花のようだ
冷たくされれば枯れてしまう
涙さえも流せなくなるほどに
巡る季節の中で揺れながら
堪え忍ぶ 誰かの目に止まるまで
人は優しさで育つ花のようだ
どんな場所でも生きていける
そこに温もりがあるかぎり