1486 106

道端にひっそりと咲いていた
花の名前を知ることはなかった

知らない間に消えてしまった
空っぽの風がそこに吹いていた


期待されて生まれた命と
期待されずに生まれた命

蒔かれた種のうちどれだけが
日の目を浴びることを許されるのだろう


人は優しさで育つ花のようだ
放っておけば萎れてしまう
すべての涙を使い果たして



道端に咲いた新しい花も
いつの間にか忘れてしまった

存在しているのに気付かれない
だから生きることも死ぬこともない


愛されながら育った命と
愛を知らずに育った命

咲かずに落ちた蕾に降り注ぐ
雨はいつだって何も語らない


人は優しさで育つ花のようだ
冷たくされれば枯れてしまう
涙さえも流せなくなるほどに



巡る季節の中で揺れながら
堪え忍ぶ 誰かの目に止まるまで


人は優しさで育つ花のようだ
どんな場所でも生きていける
そこに温もりがあるかぎり


自由詩Copyright 1486 106 2008-12-02 00:16:59
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