サンタクロースの白い袋 
服部 剛
先月開店したばかりの 
真新しいコンビニの店内に 
入るとばったり 
大きいふたつの瞳と 
目が合った 
「 おぉ 」 
小学校の同級生のともこちゃんは 
すっかりいいお母さんになっていて 
隣の旦那の後ろから 
ひょっこり大きい瞳の男の子 
「 そういえば校長になった 
  鬼泰治先生も 
  今年最後の教員生活らしいね 」 
「 来年の桜の咲く頃にでも 
  皆に声かけて 
  6年2組の教室に集まろうか? 」 
「 考えといてね 」 
「 じゃあまた 」 
挨拶の四文字では言い表せぬ 
懐かしさが湧いて来るのを抑えながら 
お揃いのジャンパーを着て 
店の外へ出てゆく 
三人の後ろ姿を見送る 
( いつまで気ままに独り身で 
( ふらふらやっているのやら・・・ 
店内に流れる 
ホワイトクリスマスを背に 
店の外に出れば 
北風に思わず肩をすぼめる 
丘の上を見上げれば 
夜闇に輝く夢の家に 
赤と緑の電球文字で点滅する 
「 Merry christ'mas 」 
二十二年前の教室にいた 
無邪気な僕を 
あの日のままの
大きいふたつの瞳で見るような 
同級生の優しいまなざしを 
懐にしまって僕は往く 
思い出をいっぱい詰め込んだ 
白い袋を背負う 
サンタクロースの面影が 
遠くで朧に光る 
クリスマス前の夜道を 
 
