楢山孝介


吸い込まれてしまいそうな青だ
水になって垂れてきそうな空だ
まばたきの間にも雲の形は変わる
海が青いのは海底に空があるからだ

知らないことについて話せないから
知っていることしか語ってこなかった
これまでの何もかも
友情も思い出も夢も嘘も
みんなかけがえのあるものだった
覚えてしまったことも忘れてしまえた
白々しい言葉だけで繋がってこられた

夕焼けの照らさない村があり
そこで一生を終える人たちは
青と黒の空しか見たことがなかった
大火事で村中が焼けた時
初めて夕焼けを見ることが出来たと皆喜んで
そのまま全員焼け死んだ

穴のような空だ
墓のような雲だ
空のような海だ
墓のような穴だ


自由詩Copyright 楢山孝介 2008-11-29 09:34:43
notebook Home 戻る  過去 未来