新しい人
ふるる

新しい人が来たので
かじかんだ指を暖めていた子は
背中をまるめてそっと
席を立った

それは
あまりにも静かに行われたので
だれかが席を立ち
新しい人が座ったことに
だれも気づかなかった

かじかんだ指を暖めていた子は外に出て
いっそう冷たい風がうなっていることに
木々の葉っぱがもう一枚もないことに
白い息をますます白くさせて
赤いほっぺたをますます赤くさせて
せいせい息を吐きながら
どこか
指を暖める場所を探し始めた

新しく来た人は
だれかが席をゆずってくれたことに
一生気づかなかった


自由詩 新しい人 Copyright ふるる 2008-11-26 13:37:11
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