曙の昇る日 
服部 剛

都会のビルの幻影に 
透けて見えるは 
幾千の顔々埋まる 
墓地の群 

電信柱の頂に 
舞い降りた一羽の烏 

びゐ玉の
澄んだ瞳に映るは 

過ぎし日の
東京に燃え盛る 
夜の炎 

全身を包帯に巻かれた 
母の前で立ち尽くす少年 

翼を広げた烏が
森に帰る頃 
二十一世紀の都会に灯り始める 
無数のビルの窓明かり 

電飾華やぐ東京の 
アスファルトの下に埋もれ 
無数の石に薄っすら浮かぶ 
顔々の声 

夜風の運ぶ囁き声 
届くことなく 
無数の靴音はく 

風になびく日の丸の 
面影を忘れて 
人々は往く  

焼野原を覆い隠した 
アスファルトの上 
顔の無い群衆は往く 

靴音の下に眠る 
石の顔々は 
一つの願いをつらぬいて 
今も夢を見ている 

この島国の 
遠い山間から昇る 
曙に照らされ 
地上に無数の花々が顔を開いて 
和音の調べを奏でる 
夜明けの日を 






  


自由詩 曙の昇る日  Copyright 服部 剛 2008-11-25 23:06:23
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