さびしさを吐く
かんな

ご飯を食べられないから
せんべいと
ミネラルウォーターだけで
生きてみようと思う
というとあなたは苦笑して
もっとやせるよ
と言うんだった

冗談ではなくて
吐いてしまうのだと話すと
うさぎと同じだね
さびしいから
吐いてしまうんだよ
と頭を撫でながら言う
だいじょうぶ
と言って撫でてくれる

やせ細った貧相なからだを
あなたの前にさらすと
とめどなく
泣けてしまって
抱いてもらわなければ
立っていられないような
女に、
ただの女になってしまう

つたう涙に口づけると
あなたの舌が
やせ細った輪郭をはっていく
息が荒くなり
まゆをひそめるただの女に
あなたはぬくもりという
とめどない愛撫をくり返す
だいじょうぶ
と言って髪を撫でる

さびしさを吐く
喘いではさびしさを、吐く
あなたというぬくもりが
やせ細ったからだの
その中を突き抜けるとき
女は泣いて
ただ泣いて背中に爪を立てる
くり返しては
さびしさの、跡を残す

背中を抱きしめると
だいじょうぶだよ
と言ってまたあなたは苦笑い
まぶたに軽く口づける
ぽんぽんと
頭を撫でられると、ただの女は
ほろりとほどけて
ほろりと、
ひとりのわたしになって
また泣いて溶け出してしまう

窓の外にはちらり、
ちらりと雪が落ちていくので
あなたは
さびしさが口に入らないように
また軽く口づける
そうしてにこりと
だいじょうぶ
と言って笑ってみせる

ほら、着がえて
おいしいものでも食べにいくよ
ぽんっとお尻をはたく
あなたがだいすきだと
言ってくれるお尻に
わたしはジーンズをはかせて
ベルトをしめる
にこりと笑ってみせると
あなたの腕をつかみ
ひとり、立ち上がってみる

外に出ると月が出ていた
薄っすらとはねる
うさぎがいっぴき




自由詩 さびしさを吐く Copyright かんな 2008-11-25 21:36:53
notebook Home 戻る