かいぶつ

この世界では
声の大きい人が偉かった
悪声だろうと
美声だろうと
とにかくデカけりゃ良い
デカけりゃデカいほど
権力を持っていた

マイクを持てば
鬼に金棒ってもんで
スピーカーの大きさが
ステータスとなっている
けれどスピーカーが
大きい人の声ほど
割れて、反響し
聞き取りにくいものはなかった
声高に叫ばれる言葉ほど
支離滅裂だった

人は大声で
喚き散らしながら
我先にマイクを掴もうと
死にもの狂いだった
蚊の鳴くような声の奴は
社会から爪弾きにされ
発言権すら奪われた
強者と弱者が共存し
そこには徹底的な
格差があった

「言論の自由だ!」
と大音量で叫ぶ奴の声こそ
言論を不自由にしている
根源だった

作家は彼らにとって
脅威だった
芸術家は彼らにとって
天敵だった
あらゆる詩人や
芸術家が暗殺された
残ったのは
下品な広告だけだった

僕らの声は
奪われてしまった
しかし言葉だけは
失わなかった
僕らには信念があった
黙する人ほど
多くを学び
多くを知っているのだという
確かな信念

僕のこの声は
今、誰かに
聞こえているだろうか

応答セヨ
声を奪われた者たち

応答セヨ
言葉の爆弾を抱えた者たち

今度は俺たちの番だ

声がデカけりゃ
良いってもんじゃないんだぜ

なぁ、そうだろ


自由詩Copyright かいぶつ 2008-11-24 23:28:37
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