プレゼント
小川 葉

 
夜空を歩いてたら
サンタクロースに会った

そのことを君におしえたくて
さがしたけれども
みつからない
君ははじめからこの世界に
いなかった気がしてくるのだから
不思議なものだ

サンタクロースに
君のことをたずねてみても
なにも知らない
かわりに僕に
プレゼントの箱をひとつくれた

プレゼント
という言葉の意味も
やがて消えてしまいそうになるけれど
箱を開けてしまうことは
それ以上にかなしいことのような気がした

目を覚ますと
あたたかい家で
僕は父と母と暮らしていた
枕元にあるプレゼントの箱を開けると
君によく似た人形が
一体入っていた

人形のお墓はどこにあるの?
と聞いて、母さんを困らせたりしたけれど
それ以外はどこにでもある
クリスマスの一日だった

やがて僕は大人になって
人形にとてもよく似た人と結婚した
たいそう幸せに暮らした
長い歳月が過ぎ
いつしか人形になった僕は
プレゼントの箱に
きれいに収められた

サンタクロースがやって来る
音を遠くに聞きながら
君が誰なのか
誰だったのかはじめて知った

ありがとう
という言葉の意味だけが
永遠に消えなかった
 


自由詩 プレゼント Copyright 小川 葉 2008-11-24 14:43:10
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