おなじ水のほうへ
小川 葉

 
おなじ水が
おなじ水のほうへ
ながれてゆくように
僕らは
さかなになりました

僕らはいつしか
濡れたからだで
水辺に立ち尽くしていました

はじめて会った
気がしませんでした
言わなくてもわかることは
言わなくてもわかるので
信頼とは
そういうことだと知りました

もうさかなではありませんでした
それが望んだことなのかも
わからないまま
息がくるしくなることも
時にはありました

二度と会えなくなるまで
呼吸しなければならないことが
愛なのだと
僕らは時々言わなくてはならない時が
ありました

おなじ水が
おなじ水のほうへ
ながれてゆく
僕らがまたいつか
さかなになるまでに

さよならは
いつも最後まで
言いませんでした
 


自由詩 おなじ水のほうへ Copyright 小川 葉 2008-11-23 23:13:13
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