邂逅のひと
恋月 ぴの

買い物に出かけた初冬の街角で
あのひとの姿を見かけた
両の手のひらをパンツのポケットに入れ

開店前のパチンコ屋に並んでいた
私の姿に気付くこと無く

他愛も無い夢と引換えに大切なものを差し出した
若い男たちに入り混じり
あのひとは
渇いた壁に映る長い影だった

帰り道
小さく折ったハトロン紙を開き
名も知らぬ野草の押し花を西日にさらす

おまえだけが頼りだと
あのひとは私の耳元で何度も囁いたような

かさかさに乾ききった薄紫色の花弁は
ハトロン紙の上で僅かに震え

ふた駅も乗り越してしまった自分に気付く

慌てて降りた駅の改札を抜け
すっかりと葉を落としたポプラ並木を辿れば
準備中の札を出した侭の喫茶店
肩の触れ合う軒先で
私から語りかけたのか
それともあのひとからだったのか

あのときの雨音
降り続く霙交じりの冷たさだけが甦り




自由詩 邂逅のひと Copyright 恋月 ぴの 2008-11-23 23:03:42縦
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