単純な犯罪
あおば

            081122


メモ用紙に残した
犯罪の証拠
飯は済んだ
風呂に入る
口頭で済ませたはずのことを
記録に残したのが怪しいと
素人探偵は
メモを疑った
疑われたメモ用紙は
これ以上言うことはないので
呆れて口をつぐむ
そして
それから1000年が経って
名探偵が現れて
メモ用紙に記されているとおりのことを
脳裏に描き
どのようなときに
このようなことを
人は
記すのだろうと考えた
記すべきと
主体的に考えたからではないのだろうかと
客観的に考えた
そして
答えを口にした

口にした途端
その答えは事実となって
歴史書にも記された

大きな嘘と
ちいさな誤謬
子供だましのような
手品に
騙されたのは
誰なのか
メモ用紙は
なにかを発したのだが
時代が移り
ことばの意味が変わっていたので
正確に伝えることができなくなっていた
限界を知るものは
感覚したことの
要点を
短いことばでぽつんと漏らす
それは
ことばというよりも
感情を示す
ことば以前のようなものであったと
もう一枚のメモ用紙の裏側に
書いてあったような気がしている


自由詩 単純な犯罪 Copyright あおば 2008-11-22 21:44:56
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