西高東低
nonya


震える指先を
ポケットに滑り込ませたら
捨て損ねたレシートが
指の間で微かに笑った

不確かな足取りで
迷子のふりをしながら
逃げ損ねた枯葉を
靴の踵で踏みにじった

丸めた背中を
透過していく大陸産の風は
掴み損ねた記憶だけを
鎖骨の裏側に置き去りにして

遠ざかる空の
足元にじゃれつく太陽は
溺れ損ねた者の影を
もう温めてはくれない

高い所から低い所へ
水が流れ落ちるように
風は等圧線の尾根を下りてくる

低い所から高い所へ
しがみつこうとする姿勢のまま
人は無様に流されていく

それでも
冷蔵庫の中で腐らせてしまった
果実のような後悔を
横隔膜の上でカラコロ言わせながら

季節を巡らなければならない
季節を思い知らなければならない

まだ
冬は始まったばかり


自由詩 西高東低 Copyright nonya 2008-11-20 19:28:17
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